不動産の減価償却費の計算方法‐基本から投資に活かすコツまで網羅

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不動産の減価償却費

不動産投資で節税の話になると、必ずと言っていいほど出てくるのがこの「減価償却」または「減価償却費」と呼ばれる言葉です。場合によっては節税対策になりますし、収益物件を探す際にも、違った角度からの判断で出来るようになるので購入時にも有利に働きます。

税金のお話も加わり少し難しい言葉かも知れませんが、意味を理解すれば計算は簡単です。お金に関わる用語ですのでしっかりと理解しておきましょう。

1.減価償却とは

減価償却とは、一言でいうと購入した商品(取得した資産)を使用できる期間分だけ、税金の計算時に費用として配分し、計算することです。
少し分かりにくいかと思いますので、なぜ必要なのか、その理由を加えて解説していきます。

通常、会社が事業を行い、税金を払うまでの流れは、簡略化すると以下のようになります。

収益 - 費用 = 利益

利益 × 税率 = 税額 

収益(売上)から、その収益にかかった費用を引くと利益が出ます。この利益に所定の税率をかけることにより、支払う税金の額が決定します。利益がゼロまたは赤字の時は、税金を支払う必要はありません。儲かっていないのですから当然ですね。
この二つの計算を、企業は毎年行い、国へ税金を支払っています。

不動産の場合、一般的に物件を購入した年は、収益よりも物件取得にかかった費用の方が多くなります。
その為、取得した年は税金を支払う必要がありません。しかし、翌年以降からは取得費を費用に組み入れることができずに、収益の金額にそのまま税率がかけられることになります。事業は毎年継続して行われるものと仮定していますので、結果的に高い資金を使って購入した割には沢山の税金を支払わなければなりません。

そのような不都合をなくすために、物件の取得費用をその年度に一括して計算するのではなく、特定の資産が使用できる期間を会計上あらかじめ定めておき、その期間内で徐々に費用として計上できるようにしているのです。

2.申告し忘れると損することも

減価償却費の金額は、確定申告時に非常に重要となります。税金は収益に費用を差し引いたものにかかってきますので、費用をきちんと申告しておかないと、必要以上に税金を支払う必要が出てきます。

建物の減価償却費を費用として認めてもらうには、確定申告時に「減価償却費欄」へ費用金額を記入しなければなりません。
申告しなければ減価償却費を費用として計上してくれませんので、その分の費用の控除なしで税金を支払う必要があります。

平成23年12月2日以後に確定申告の期限が来ていたものに対しては、その申告期限から5年間までは「更正の請求」と呼ばれる確定申告の修正が行えます。
もし今まで減価償却費を計上し忘れていた・していなかった方は、多く支払い過ぎた税金が返ってくる可能性がありますので、一度確認してみましょう。(国税庁「更正の請求期間の延長等について」)

 

3.減価償却の対象となるもの

減価償却の対象となる資産のことを、「減価償却資産」と呼びます。

不動産においては、建物や建物付属設備が減価償却資産の対象となります。土地は対象とはなりません。これは、建物が時間の経過により価値が減少するのに対し、土地は価値が減少せず、半永久的に使用できるからです。

 

4.減価償却できる期間(新築物件の場合)

建物には、それぞれ用途・構造によって、減価償却を行える期間が定められています。この期間のことを、減価償却における「耐用年数」と呼びます。

今回は、住宅用の構造の違い別に、それぞれの建物の耐用年数を見てみましょう。新築で不動産を購入した場合、以下に記載している年数の間、毎年減価償却費として計上できます。
鉄骨造構造の建物に関しては、骨格材と呼ばれる鉄骨の厚さによって耐用年数が異なります。

住宅用の建物の耐用年数

木造・・・・・・・・・・・・・・・・・22年

れんが造・石造・ブロック造・・・・・・38年

鉄骨造(骨格材の厚さが3mm以下)・・・19年

鉄骨造(骨格材の厚さが4mm以下)・・・27年

鉄骨造(骨格材の厚さが4mm超)・・・・34年

鉄骨鉄筋/鉄筋コンクリート造(SRC/RC)・・・47年

 

建物構造がより強固になるにつれ、耐用年数が長くなっているのが分かりますね。木造とSRC/RCとでは、耐用年数に二倍以上の差が出ています。

耐用年数期間中、確定申告の際に毎年一定額を減価償却費として費用計上できます。耐用年数が終了した後は、実際にはまだ使用できることが多いですが、会計上価値がゼロとみなされるので、費用計上は出来ません。

 

5.減価償却費の計算方法

建物の減価償却費の計算方法はシンプルです。以下が計算式となります。

取得価格 × 償却率 = 減価償却費の金額

取得価格についてはそのまま、建物を取得した時の金額です。後は償却率の求め方が分かれば、減価償却費が算出されます。

現行の定額法では、最後の年に1円を残して、取得にかかった費用を全て減価償却費として計上できるようになっています。

では、償却費とは何なのか、またどのような方法で求めるのか、以下解説していきます。

 

5-1.償却率について

償却率とは、建物取得価格に掛けることにより、耐用年数の期間中、一定の費用額になるように計算するための割合です。

耐用年数から取得価格を除しても近い数値が出ますが、取得価格や耐用年数によっては割り切れないものもありますので、償却率を使用するように定めています。

国税庁が公表している「2 減価償却の計算例:減価償却資産の償却率表」で耐用年数に応じた定額法の償却率(左から2番目の列。平成19年4月1日以後取得の場合)が載っていますので、こちらを参考にしましょう。
建物の減価償却の計算は、定額法を採用していますので、定額法の償却率を見ましょう。

※右から2番目の列に、旧定額法の償却率が載っていますが、こちらは平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産に対してかかる割合です。定額法とは計算方法が少し異なる、更正の請求が現時点では不可などの理由により、必要ないと判断しました。したがって、今回は旧定額法の計算方法を割愛致します。

 

5-2.新築物件の償却率を見る

4.減価償却できる期間」でご紹介した新築物件の耐用年数と、さきほどご紹介した償却率表から、それぞれの償却率がいくらになるのかを見てみましょう。

新築の木造の建物の場合、耐用年数が22年ですので償却率は「0.046」となります。

新築の鉄骨造(骨格材の厚さが4mm以下)の場合、耐用年数が27年ですので償却率は「0.038」となります。

新築の鉄骨鉄筋コンクリート造の場合、耐用年数は47年ですので、償却率は「0.022」となります。

 

5-3.中古物件の償却率を見る

減価償却はなにも新築物件だけに限るわけではありません。耐用年数(築年数)が新築時からすでに経過している場合でも、取得時から新たに耐用年数を求めることができます。
これは、減価償却費が会計の便宜上、耐用年数を定めているのであって、実際に使用できる年数とは相違があるからと思われます。

中古物件を購入した場合、耐用年数がすでに経過しているか、途中まで経過しているかによって耐用年数を求める計算方法が異なります。これらの計算方法を「簡便法」といいます。

 

5-3-1.耐用年数が既に経過した建物

耐用年数が既に経過した建物を取得した場合、耐用年数の計算式と償却率の見方は以下のようになります。

新築時の耐用年数 × 0.2 = 取得した建物の耐用年数(端数切り下げ)

木造の中古物件を取得した場合、
19 × 0.2 = 3.8 ⇒ 3年が耐用年数となります。

償却率表で耐用年数が3年の所を見れば、償却率は「0.334」だと分かります。

※計算された耐用年数が2年に満たない場合は、2年とすることになっています。

 

5-3-2.耐用年数が途中まで経過している建物

耐用年数の一部のみ経過している建物の計算式は、以下のようになります。

(新築時の耐用年数-経過年数) + 経過年数 × 0.2 = 取得建物の耐用年数

築年数が20年の鉄筋コンクリート造の中古物件を取得した場合、
(47-20)+ 20 × 0.2 = 31年が耐用年数となります。

同じく償却率表で該当箇所を見ると、償却率は「0.033」となります。

 

6.減価償却費を求める計算のケーススタディ

2つの計算例をご用意しました。ご参考にどうぞご覧下さい。

最終年だけ、残額に1円を引いた金額になりますのでご注意下さい。

 

6-1.新築一戸建て(木造)の場合

・建物価格:1,500万円
・築年数:0(新築な為)

耐用年数 = 22年(住宅、木造の耐用年数)
償却率 = 0.046(償却率表から確認)

1,500 × 0.046 = 69万円(減価償却費)

年度毎の減価償却費用
1年目=69万円
2年目=69万円
以下21年目まで金額は同じ

22年目=51万円 - 1円 = 50万9,999円

 

6-2.中古マンション(鉄筋コンクリート造)の場合

・建物価格:2,100万円
・築年数:17年

耐用年数 =(47-17)+ 47 × 0.2 = 39年(端数切り下げ)
償却率 = 0.025

2,100 × 0.026 = 54.6万円(減価償却費)

年度毎の減価償却費
1年目=54.6万円
2年目=54.6万円
以下38年目まで金額は同じ

39年目=25.2万円 - 1円 = 25万1,999円

 

7.建物の価格が分からない?

不動産の売買契約書に、建物の価格と土地の価格が別々に記載されている場合は、そのまま計算式に代入することができるので問題ありません。
しかし、各々の金額が明記されておらず合計金額しか記載されていない場合、どのようにして建物の価格を求めるのでしょうか。

建物の価格を求める方法は様々ありますが、物件と建物の固定資産税評価額の比で按分する方法が一般的な求め方となります。計算式は以下の通りです。

売買価格 × (建物の固定資産税評価額 ÷ 物件の〃)= 建物の価格

 

8.減価償却費を不動産投資で活かすためのコツ

耐用年数の経過後は、前述した通り減価償却費を費用として収益から差し引くことができなくなります。また、耐用年数が長ければ長いほど、1年に費用として計上できる金額が少なくなります。

そこで、減価償却費を意識した不動産の購入方法は以下のようになります。

 

8-1.建物価格の割合が高い物件を選ぶ

土地は減価償却の対象となりませんので、建物価格の割合が高いほど、より多く減価償却費として不動産所得の費用に計上できます。
したがって、節税効果が多く得られることになります。

ただし、建物が経年劣化により古くなればなるほど、物件価格が土地のみの価格に近付いていきますので、売却時には注意が必要です。

 

8-2.耐用年数の短い建物を選ぶ

耐用年数が短いということは、それだけ毎年費用として計上できる額が大きくなるということです。

例えば、建物の取得価格が1,000万円で耐用年数が10年の場合、
1,000 × 0.1(償却率) = 100万円が減価償却費として計上できます。

同じく建物の取得価格が1,000万円で、耐用年数が20年の場合、
1,000 × 0.050 = 50万円が減価償却費になります。

賃貸収入による収益が年間100万円だったとすると、単純計算ですが、耐用年数が10年の場合、会計上不動産所得としての利益はないことになります。20年の場合は、100-50万円=50万円が利益として計上され、他の所得と合算して課税されることになります。

では耐用年数が短ければ短いほど良いのかというと、そうではありません。売却時に2つのデメリットが存在することになります。

・短期売却では売却時に高い税率がかかる

短期で売却した場合と、長期間保有してから売却した場合とでは、得られた利益(譲渡所得)にかかる税率が大きく違います。
対象不動産の保有期間が5年を超えるかどうかで異なりますので、5年以下で売却を検討する場合は気をつける必要があります。

・建物の経年劣化により売却価格が低くなる・売りにくくなる

一般的に、築年数が古くなればなるほど建物の価値は減少します。築年数があまりに古いと、買い手がなかなか見つからず、希望価格よりも低い金額で売却しなければならないこともあります。
しかし、こちらは不動産市場の動向によっても左右されますので、一概には言えません。

 

まとめ

いかがでしたか。減価償却の意味・計算方法から、実際の不動産投資・資産運用に適応するコツまで網羅しました。

不動産投資のメリットの一つに、節税対策になるという話があります。収益物件で成功するためには、いわゆる出口戦略まで考えることが、本当の節税対策へと繋がります。

今回の記事で、投資の初心者の方にも、既に始めている人にも理解を深められたら嬉しく思います。

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